南阿蘇鉄道高森駅・交流施設
2024年

所在地 : 熊本県阿蘇郡高森町
建築設計 : 株式会社ヌーブ
構造設計 : 株式会社MID研究所
施工 : 株式会社竹内工務店
撮影 : 太田拓実

【寸評】
南阿蘇鉄道復興の一環として再開発された、終発着駅である高森駅舎と交流施設である。
「とにかく広いプラットフォーム」を中心に、両側に位置する駅舎と防災交流施設のR階梁にはヒノキ集成材によるレシプロカル格子、庇にはスギ製材によるレシプロカル格子が採用されており、プラットフォーム上屋と、回廊には高森駅用に開発された「修羅組み」が採用されている。複雑に見える見た目と名前とは裏腹に、一般流通材を用いて長いスパンを実現できること。柱頭と束以外は直交加工で済むこと。束間隔を野地板の貼りやすい寸法にすること等の木材利用に配慮した設計となっていることに加えて、Grasshopperによる設計データをプレカット工場のCADと連携させることで精度の高さと製造時間の短縮を実現した架構であり、部材の製造効率だけではなく、施工面でも地組みをした部材を上から落とし込んでシンプルに組み上げる工夫が盛り込まれている。
鉄骨柱と修羅組み接合部分と、修羅組みのパーツ同士を接合する部分にはホームコネクターが使用されており、木材同士をずらして配置し、小さい断面で効率よく且つ綺麗な納まりとすることができるホームコネクターを有効に活用することによって、小さい部材を組み合わせた時の断面欠損や、納まりの課題をうまくクリアした事例となっている。
木架構の面白さを実現しつつ、木材の生産・加工性と施工性まで考慮された建築物であり、地方での木材活用の要素が詰まった事例として高く評価する。
(北添 幸誠 / NPO法人 team Timberize 理事)