徳島県新浜町団地県営住宅2号棟
2023年

所在地 : 徳島県徳島市
建築設計 : 内野設計・島津臣志建築設計事務所・カワグチテイ建築計画
構造設計 : 長谷川大輔構造計画
設備設計 : 上久保設備設計
施工 : 亀井組グループ
写真 : Yohei Sasakura

【寸評】
あらわし木造4階建て共同住宅「新浜町団地県営住宅2号棟」は、2019年の改正建築基準法施行により設計可能となった、火災時倒壊防止建築物、避難時倒壊防止建築物の第一号の共同住宅である。従来、4階建て共同住宅は耐火建築物が求められる規模と用途であるが、法改正により、消防活動の円滑化による建物の倒壊抑制と、避難及び捜索救助の円滑化のための措置を盛り込むことで、構造躯体を1時間を超える高度な準耐火構造で設計可能としたものである。耐火被覆がマストの耐火構造から、燃えしろ設計が可能な準耐火構造に代替された点が最大の特徴であり、その特徴を建物全体の設計に取り入れている。
防耐火法令の改正後一棟目のため、防耐火面がクローズアップされるが、燃えしろ設計した330mm角の柱・梁+筋交いによるシンプルな構造システム、遮音や横方向の設備配管を考慮した床のシステム、縦方向の設備配管を屋外に配置し区画貫通部を減らす設備システムなど、多くの設計的な工夫により、あらわし木造の課題に対して回答を用意している点を大いに評価したい。
 「新浜町団地県営住宅2号棟」は、地方都市の公営共同住宅、民間共同住宅のプロトタイプとなり得る、意匠と機能・性能を両立した建築物であると言える。
以上の理由により、ここにT-1グランプリ2023を贈る。
(安井昇 / NPO法人 team Timberize 理事長)