流山市おおぐろの森小学校、中学校
2021年

【流山市おおぐろの森小学校】
所在地 :千葉県流山市
建築設計:日本設計
構造設計:日本設計
施工:松井建設
写真提供:石島写真事務所、株式会社川澄・小林研二写真事務所

【流山市おおぐろの森中学校】
所在地 :千葉県流山市
建築設計:日本設計
構造設計:日本設計
施工:奥村組 中村組 流山緑化土木
写真提供:株式会社 川澄・小林研二写真事務所、輿水進

【寸評】
このところ都市木造の世界では急激に高層化が進んでいる。来年度のT-1グランプリ候補作には高層木造ビルが少なからずノミネートされると予想され、都市木造が新しいフェイズに入る分岐点として評価される年になるだろう。したがって、本年度のグランプリにはこれまでの都市木造を総括するようなものがふさわしい。そんな観点から、流山市おおぐろの森小学校、中学校が選定されることとなった。
1時間準耐火構造の木造3階建て学校を設計する際は、まず初めにこの2つの学校を参照すれば良い。そう思えるほどに、計画・構法・構造・木質材料・木材調達・地域性・環境など、多岐にわたる検討すべき事項が網羅され、整理されている。全領域にわたって地道に、かつ真摯に検証が行われており、そのプロセスと最終的なアウトプットが合わせて公開されている点が素晴らしい。その一つ一つが、後に続く設計者の指標となるものである。
高い技術力によって鍛え上げられたたくさんの技術が惜しみなくつぎ込まれているが、過剰さや押しつけがましい感じはなく、凛とした木造空間のデザインに自然に落とし込まれているのは流石である。大手設計事務所ならではの総合的な設計力が遺憾なく発揮された、中低層の木造建築のメルクマークと言える作品である。
小学校が昨年度のLVL賞、中学校が今年度のLVL賞(二年連続)、そして二つの建築を合わせて今年度のグランプリという、T-1史上初の極めて異例のダブル(トリプル?)受賞であることも特筆に値する。
(久原 裕 / NPO法人 team Timberize 理事)