西治プロジェクト
2021年

所在地 :千葉県船橋市
建築設計:KOMPAS
構造設計:yasuhirokaneda STRUCTURE 協力:桑子建築設計事務所
施工:青木工務店

【寸評】
アートコレクターである施主のギャラリー兼住居である。住居兼ギャラリーをあえて表現しなかったのは、施主の意向を受けた設計者が「ギャラリー付き住宅というよりは住宅付き美術館」を目指したことに由来する。エンジニアである筆者が評価するのもおこがましいが、自ら設計した建築をまるで他人の建築物を評価するかのように客観的な視線で語り、施主の意向も含めた与条件に対しての真摯なリアクションの結晶が建築物であるかの如く、建築全体に論理性がにじみ出ているところが秀逸である。実際、1階と2,3階の構造要素のずれは一見すると非合理的に見えるが、その「ねじれ」自体が空間的な表現になっており、違和感はみじんもない。その「ねじれ」は構造計画にも及んでおり、工学的な困難さを解決しているのが、ホームコネクターである。木造のフィーレンディールや、面外に有効な120mm厚の大きな壁面というチャレンジングな架構は、ともすると非合理な架構ともとらえられ兼ねない。しかし、非合理性を工学的に許容しながら性能を担保し、建築家の創造に寄り添うことが、現在の構造計画の王道であるともいえる。その意味でホームコネクターの果たす役割は非常に大きく、ホームコネクター賞にふさわしい作品である。

(萩生田秀之 / NPO法人 team Timberize 副理事長)