柳小路南角
2019年
所在地 :東京都世田谷区
建築設計:三井嶺建築設計事務所
構造設計:坂田涼太郎構造設計事務所
施工 :渡辺富工務店
【寸評】
百貨店裏の路地に面して建つ3階建てのテナントビル。RC造、木造、S造の混構造で、一見増築を重ねてできたような足し算的な外観で街並みに溶け込んでいる。
内部の柱・梁は木造で、大断面集成材ではなくラフな仕上げの重ね梁と束ね柱を採用している。太い素材感あふれる骨組み(耐火性能は、十分な燃えしろを耐火実験により実証)はそれぞれの店舗スペースに魅力を与えると同時に、性格の違うどんな店舗のデザインも受け止めてしまう包容力を持っている。内装の変転は商業建築の宿命であるが、この柱・梁は時を経ても建築が使われ続けるための拠り所となるのではないだろうか。この点が仕上だけの木装デザインと一線を画するところであろう。
これからの都市木造として高層木造もひとつのあり方であるが、都市における割合の最も多いこうした低層・中層のテナントビルの骨組みが木造でつくられることは、都市の多様な魅力を高めていくことに寄与していくに違いない。
(保科 章/NPO法人 team Timberize 監事)