所在地:岐阜県岐阜市
建築設計:伊東豊雄建築設計事務所
構造設計:ARUP
施工:戸田建設・大日本土木・市川工務店・雛屋建設社 特定建設工事共同企業体
写真:Kai Nakamura(1枚目、3枚目)
【寸評】
エントランスから2階に上がった途端、木格子の柔らかな大天井に包み込まれ、理屈抜きに木の心地良さを存分に感じることができる。小さな部材の集積により構成された全体、柔らかさや繊維といったイメージが投影された造形、グローブの光が格子の周囲をぼんやりとたゆたう様子など、木ならではの特質が如何なく表現されている。耐火木造といえばとかくテクニカルなことにばかり目が行きがちだが、建築にはもっと大切なことがあると改めて気付かされる作品である。
全体は方形に切り取られており建築としては美しいが、同時に木天井も裁断されており周辺への連続性が弱まっているのが、都市木造としてはやや残念な点である。
(久原 裕 / NPO法人 team Timberize 理事)
この建築の一番の特徴は何といっても木造格子屋根であろう。まるで編み物のように組まれた屋根は、幅120mm×厚さ20mmのラミナ材を3方向・最大21層、現場で1層ずつしならせながら積層することで構成されている。
構造的には、施工時のラミナの強制曲げによる初期応力の評価、ラミナの積層方向のビス・接着剤併用接合の性能、ラミナの継手方向の性能、クリープによる変形増大など、検証するべき多くの課題・難題を有していたと思うが、構造解析・構造実験・施工性など、それぞれの整合性をはかりながらこの木造グリッドシェル構造を成立させている。
また、耐火設計においても、出火・延焼防止・初期消火に関する様々な検証も行われており、この建築を実現させた設計・施工関係者の積極的な取り組みは評価に値すると思う。
(加藤 征寛 / NPO法人 team Timberize 理事)