避難所と仮設住宅での生活を、少しでも安らぎや落ち着きの得られる環境で送っていただけるようにという想いからこの仕組みを考えました。
キットハウスという小さな基本ユニットをうまく生かして、避難所のコミュニティーを守りながら、同時にひとりひとりのプライバシーを守る仕組みです。たくさんの方が避難され、状況もそれぞれ違いますので、ひとつの選択肢として、皆様の参考にしていただければ幸いです。
集成材でできる「キットハウス」を使用する
このキットハウスは以前開発したプロトタイプです。意匠と構造の検討を行い、試作をすでにつくっています。ロの字型のフレームと、壁・天井・屋根のパネルをビスで留めていくだけで簡単に出来るキットです。
木のあたたかさと美しさ、快適性を併せ持っています。
【キットハウスの作り方】
足場を使わず、素人でも建てることのできるキットです。
(1) コの字型のフレームを向かい合わせに接合してロの字型のフレームを組み立てます。
(2) 基礎の上に土台の木を敷き、その上にロの字型のフレームを1m 置きに建てていきます。
(3) 隣り合う2つを建てたら、壁のパネル(またはサッシ)を横からビスで留めていきます。
(4) 壁が終わったら、天井パネルを載せ、留めつけます。屋根の母屋をその上に敷き、断熱材を敷き込みます。
(5) 最後に、屋根パネルを載せてから、屋根材(板金やシート)を葺きます。
*使用が終われば、解体して、またキットとして再利用します。
「キットハウス」は、様々な大きさや用途で使えます
プライベートを守る最小限のスペース確保から、家族で住める3DK タイプまで、キットハウスを使えば、様々な大きさや用途に対応可能です。
<第1段階> 避難所のまわりにプライベート空間をつくる
仮設住宅の用地の確保に時間がかかる等の理由で、避難所生活が長期化する場合も考えられます。そのようなケースでは、避難所の住環境を改善することが重要です。2.5m×2.7m、2.5m×5.4m のユニットを、避難施設となっている体育館などの周囲に、個室として配置して、プライベートな空間を確保します。この場合は、敷地を有効に活用するため、間隔を置かず配置します。個室で夜は眠り、体育館は昼間と夜の共用スペースとして使用していきます。住民の方々の孤立防止とプライバシーの確保、インフラ工事を極力しないことで、早急に避難所生活を改善します。
<第2段階> 仮設住宅用地に、「コミュニティーコア施設」をつくる
仮設住宅街には、仮設住宅の他に、核となるコミュニティーコア施設が必要とされます。先に、街の中心となるコア施設をつくることで、コミュニティーを維持しながら仮設住宅街へ移動します。コミュニティーコア施設はキットハウスの基本ユニットの組合せで建設可能です。
<第3段階>避難所から仮設住宅街につなげる
コミュニティーコア施設の周囲に、避難所まわりに置いていた個室ユニットを移設していきます。組み立てたまま持っていき、施工の簡略化をしてもよいですし、道路や敷地状況によっては解体して持っていくことも可能です。移設なので、短期間に新しい「仮設住宅街」に移ることができます。
<第4段階> 個室ユニットを組み合わせて、仮設住宅に変えていきます
建設中の個室ユニットの方々は、コミュニティーコア施設を一時的な生活拠点とします。できた順に、仮設住宅に移っていきます。 このようにすることで、移動などで散り散りにならず、コミュニティーは守られながら、生活の舞台を変えていくことができます。