『清和文楽館』
加藤 征寛(team Timberize)
清和文楽館
設計:石井和紘
構造設計:浜宇津正
施工:日動工務店
竣工:1992年
用途:文楽劇場+展示館
所在地:熊本県上益城郡山都町大平原口152
昨年(2019年)から今年(2020年)にかけて仕事で熊本県を訪れる機会が増え、「折角訪れるからには・・・」と熊本県内の建築をいくつか見て回ったのだが、今回はそのうちの一つである清和文楽館について紹介してみたいと思う。
清和文楽館はくまもとアートポリスプロジェクトの一つであり、建築家石井和紘氏によって設計され、1992年に竣工した劇場である。旧清和村(平成の大合併により現在は山都町)には江戸時代から『清和文楽』という農村芸能が今でも伝承されており、この施設はその文楽の上演、および映像や人形展示等によって、清和文楽を紹介するための施設として建設された。
清和文楽館は、主に舞台棟・客席棟・展示棟の3つの棟からなる。特にこの客席棟の屋根架構は迫力があり、今では『相持ち構造』や『レシプロカル構造』と呼ばれることが多いのだが、建設当時は『騎馬戦組み手工法』という呼ばれていた事もあったそうだ。そして何より、製材の断面サイズの大きさには圧倒される。僕を含めて4名で見学させて頂いたのだが、全員が終始屋根架構を眺めながら棟内を歩き回る状態であった。
展示棟の屋根架構は、円形の中心部分に時計回りに組んだ相持ち梁と、円形の外周部分に反時計回り方向の相持ち梁が配置されており、ダブルらせんの相持ち構造となっている。
ところで今回の見学に際して、施設の方がご丁寧に館内をご案内して頂き、更には特別に(?)建設当時の動画まで見せて頂いた。この動画が何とも臨場感があり、また造り手の情熱を大いに感じることができる動画で、今でも強く印象に残っている。
清和文楽館の隣には、同じく石井和紘氏設計で1994年に竣工した清和物産館『四季のふるさと』と呼ばれる道の駅も併設されているのだが、こちらの屋根架構も中々面白いし、お土産も結構充実している。
また、その物産館のさらに隣には、同じく石井和紘氏設計で2004年に竣工した清和郷土料理館という飲食店も併設されているので、機会があれば是非訪れてみて欲しい。
余談ではあるが、清和文楽館から東方面に車で10分ほど行ったところに、車道と歩道が二重構造になった変形フィーレンデール鋼橋の馬見原橋があり、また西方面に20分ほど行ったところには、日本最大級の石造りアーチ水路橋とも呼ばれる通潤橋もあるので、あまり時間の無い時などは併せて訪れてみてはいかがだろうか。