所在地:千葉県市川市
建築設計:工藤和美+堀場弘/シーラカンスK&H
構造設計:佐藤淳構造設計事務所
施工:竹中工務店
写真:浅川敏
【寸評】
木の架構の奥行き感、陰影をともなった空気感について、常々それは「木」建築のデザイン的特徴だと言ってきた。現代では大きな木質材料がでてきたため、その特徴は忘れがちだが、寺社や町家の木を組み合わせてできる「木を纏った空間」がその場所、その建築の空間の豊かさを確かにつくりあげている。
この建築は、規模に対して天井が低く設定されている、が、架構の奥行きは深い。そして、架構は一見秩序だって見えてゆらぎを導入した配列だと言う。ここに、ふたつの伝統的な木造建築の特徴が見られる。ただし、勾配屋根の軒を低く抑える、立体格子や並列された梁で奥行き感をつくる、という従来の方法をスマートに現代風に仕立て直している。架構は水平でありつつ天井は低い。格子は荒めの素材感を編み込んだような繊細かつ素朴な架構。木造デザインのエッセンスをしっかり受け止めながらも、現代人にとって新鮮に感じる建築としてデザインされている。
都市木造にとって大事なものは、何も技術的なことだけではない。伝統的なもの、古いものと感じられてしまう木造建築だが、それを新しいやり方で今という時代にリンクさせ、「木」建築のデザインのエッセンスを人々に伝えていくことが、都市に木造を建てていきたいと思う人々の心をつくっていくのだ。
(八木敦司 / NPO法人 team Timberize 理事)
長方形の単純な平面に列状ながら一見不規則に並べられた柱、あえて空間の中央に配置された柱。壁ではなく柱が空間を不明瞭に分割する。列柱が、屋根架構に潜む明確な構造システムを暗示させている。壁・桁などの線で支持する場合には、梁は1方向(ワンウェイ)のシステムが採用されやすいが、点の柱で支持する空間では、2方向(ツーウェイ)で活用するのが自然である。さらに平面の直交座標系に対して角度を振ることによって出隅部分の軒の処理を合理的にしている。構造的には、単位面積あたりの屋根荷重から必要な梁の本数が算出可能でその配置リズムは自由になり、ここでは「1/fゆらぎ」のリズムで並べることができる。重ね格子梁では構造せいが大きくなりがちであるが、天井懐空間の遮音、振動防止、防火、設備活用などと合わせて工夫ができれば、この単純な構造システムの組み合わせによる単位空間の構成は、都市木造に求められる多層構造にも生かしやすい。
CLTなどの厚板面材と大断面集成材の中間の薄くてせいの高い梁は、LVLの得意分野になっていくだろう。こうした工夫が木質厚板工法の中でも比較的薄い30~60mm厚の面材の新しい活用につながることを期待したい。
(腰原幹雄 / NPO法人 team Timberize 理事長)