鉄骨の強さと木の美しさを兼ね備えたビル
木質ハイブリッド集成材は、鋼材を内蔵した集成材です。内蔵されている鉄骨は、建築の構造を受け持ちます。そして木と鉄を組み合わせることで、火災時には木材被覆部が燃え尽きずに自然鎮火する「燃えどまり」現象が起こり、内蔵された鉄骨が守られ、建物の安全を確保します。地震にも火にも強い建築です。
木質ハイブリッド集成材は、鉄骨を木が被覆しているため、普段は木の部分しか見えません。日本人が古くから育んできた木の文化や木造建築の精神を受け継ぎ、木に囲まれた穏やかな空間を作り出します。
津波避難ビル
東日本大震災による津波被害は極めて甚大でした。どうすれば対処できるか、それを正しく理解するためには、今後の研究を待たなければいけません。そのためには、都市計画、防災計画、建築計画など多様な視点からの提案を積み重ねていく必要があるでしょう。
そんな中で今回、津波避難ビルが有効に機能した事例が報告されています。地域の条件に見合った場所を選定し、津波の進行方向を考慮した構造計画を行って倒壊を防ぐ建築のことで、非常時には海岸に近い住民の避難場所となります。
津波避難ビルは、構造形式としてはRC造やSRC造であることが要求されています。これは津波に対抗する構造形式としては確かに頷けますが、一方で無機質な高層のビルが海岸線に立ち並ぶさまが景観としてふさわしいのかどうか、考える必要もありそうです。
下層階をSRC造、上層階を木質ハイブリッド造にした建築
そこで、木質ハイブリッド造の利用を考えます。木質ハイブリッド集成材は鉄骨を内蔵しているため、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)との接続がスムーズにできるからです。
下層階はSRC造として津波に備えます。用途は役所などの公共施設やオフィス、店舗など、日常生活の中で利便性が要求されるものがふさわしいでしょう。地域の核となるような施設です。
上層階は木質ハイブリッド造として、木の美しさを活かした居住空間(例えば学校、幼稚園、共同住宅など)などが想定されます。必要に応じて下層階のバックアップ施設(重要書類の倉庫など)を設けます。木によって作られた津波避難ビルは、街に安心と優しさをもたらしてくれることでしょう。