熊本県立球磨工業高等学校 管理棟
2014年
所在地:熊本県人吉市
建築設計:ワークステーション・モードフロンティア・萩嶺設計共同体
構造設計:昭和女子大学/森部康司 萬田隆構造設計事務所
施工:味岡・速永建設工事共同企業体
【寸評】
木をたくさん使うことを是とする建築や建築家が世の中には多い。たくさん使うこと自体に異論はないが、あらゆる箇所に木造を現しとする、ややもすると無粋に見えてしまう建物もまた多いと感じる。
この建物は、周辺に豊かな森林資源を有する場所に計画されたものであり、豊富な資源を活かした木造が要求されていた。設計者が「木の洞窟」と呼ぶ空間は、量塊感のある壁柱と天井の木ルーバーにより、木の物質感を表現しつつ軽やかに実現されている。三角形の壁柱は、その形状自体が構造的に合理的であり、ハニカム形状のプランと親和性を保ちながら、屹立しているようであり、包み込むようでもあり、不思議な空間を構成している。木を大量に使用しながら、前述の無粋な建築とは一線を画している。
また、地域特性に合わせ雨水の流れやすい屋根形状に変更したり、壁柱の製作方法を乾燥収縮を考慮した分節型に改良するなど、木の特性を十分理解した設計が随所に見受けられる。数多くの木造建築の経験を活かし、かつ、設計者の意図する「木の豊かな物質感を前面に出した空間表現」を巧みに実現しており、都市木造の新しい可能性を見せてくれる建物である。
(萩生田 秀之 / NPO法人 team Timberize 理事)