所在地:静岡県浜松市
建築設計:mA-style architects
構造設計:坪井宏嗣構造設計事務所
施工:(株)荒川工務店
写真:Kai Nakamura
【寸評】
木と鉄の特徴を相互に活かして組み合わせたハイブリッドな構成とその表現は、木造建築の可能性を広げるものである。
連続する薄いフィン状の三角の木架構が軒下で浮遊し、住空間の曖昧な領域を作り出している。この印象的な空間を実現するためには、繊細なスチールの支持体と、木とスチールのディテールレスな接合が必須だった。ホームコネクターがデザインのために使われており、同時にそれなくしては成立しないデザインであるという意味で、まさにこの賞にふさわしい建築だと言えるだろう。
デザイン面ばかりでなく、建方計画もホームコネクターの特徴を活用したものとなっている。そこには地域のビルダーのスキルアップを目指す中長期的な意図も感じられる。
(久原裕 / NPO法人 team Timberize 理事)
学生の頃、木は伝達効率が悪いから(モーメント抵抗の回転剛性が極端に低い)から剛接合にはできない、と習った。学生当時にもドリフトピン等にによるモーメント抵抗接合はあったが、大断面集成材に限られた。
それはもう昔の話で、ホームコネクターは小断面の部材においても接合耐力が高いため、モーメント抵抗接合としても十分な性能と実績がある。
本作品は、2×12という安価であるが部材成のある部材をモーメント抵抗接合とすることで、その性能を最大限に活かしており、その合理性が建築空間としてそのまま表れている。木造住宅は、その他の構造に比べて構造材と下地材のヒエラレルキーが少ないが、この作品では、合理性を突き詰めた結果ヒエラレルキーそのものをなくしてしまっており、それが良い意味で潔く、空間を心地よいものにしているように思える。
木造の特性を紐解き、新たな技術を用いながら新しい空間を提示してくれている、ティンバライズに理念にあった素晴らしい作品だと思う。
(萩生田秀之 / NPO法人 team Timberize 理事)